マンジャロやウゴービに続く存在として、最近注目を集めているのが「レタトルチド」です。
GIP・GLP-1・グルカゴンという3つの受容体に作用するよう設計された開発中のお薬で、臨床試験では週1回の注射として使用されています。海外の研究で大きな体重減少が報告されたことも、関心が高まっている理由の一つです。[1][2]
ただし、2026年9月時点では、日本を含む世界のいずれの国・地域でも承認されておらず、一般診療で処方を受けたり、承認薬として正規に購入したりできる段階にはありません。[1]
この記事では、レタトルチドの三重作用やマンジャロとの違い、臨床試験の結果、副作用、日本での承認見通しについて、現在わかっている範囲で解説します。

レタトルチドとは
レタトルチドは、米国の製薬会社イーライリリーが開発しているお薬です。開発コードは「LY3437943」で、臨床試験では週1回の皮下注射として使用されています。[1]
最大の特徴は、次の3つの受容体に1つの成分で作用する点です。
- GIP受容体
- GLP-1受容体
- グルカゴン受容体
3つの受容体に作用することから、「三重作動薬」や「トリプルアゴニスト」と呼ばれます。
マンジャロの有効成分であるチルゼパチドは、GIPとGLP-1の2つの受容体に作用するお薬です。レタトルチドはそこにグルカゴン受容体への作用を加え、食欲や血糖だけでなく、エネルギー消費にも働きかけることを目的に開発されています。[1][3]
レタトルチドの三重作用とは
GIP、GLP-1、グルカゴンは、いずれも食事やエネルギー代謝に関わるホルモンです。レタトルチドでは、3つの作用を組み合わせることで、体重や血糖などへの影響が研究されています。
GLP-1受容体への作用
GLP-1は食事に伴って分泌され、血糖値に応じたインスリン分泌を助けるホルモンです。食欲や胃の内容物が排出される速さにも関係しています。GLP-1受容体に作用するお薬には、ウゴービの有効成分であるセマグルチドなどがあります。
GIP受容体への作用
GIPも食事をしたときに分泌され、血糖値に応じたインスリン分泌に関わります。GIPとGLP-1の両方に作用する代表的なお薬が、マンジャロの有効成分であるチルゼパチドです。2つの受容体に働きかけることから、GIP/GLP-1受容体作動薬と呼ばれます。
グルカゴン受容体への作用
グルカゴンには血糖値を上げる働きがあるため、「なぜ減量を目的とした薬で作用させるの?」と疑問に思うかもしれません。一方、グルカゴンはエネルギー消費や脂質代謝にも関わっています。レタトルチドは、GIPとGLP-1の作用を組み合わせながら、グルカゴンの代謝に関わる働きを活用するよう設計されたお薬です。[3]
ただし、単純に「グルカゴンが脂肪を燃やす」と説明できるものではありません。3つの作用がどのように影響し合うかについては、現在も研究が続いています。

レタトルチドとマンジャロ・ウゴービの違い
3つのお薬の主な違いは、作用する受容体と承認状況です。

レタトルチドはマンジャロと同じイーライリリーが開発していますが、マンジャロの新しい用量や改良版というわけではありません。作用する受容体が異なる、別の成分です。
レタトルチドはマンジャロより効果が高い?
これまでに公表された別々の臨床試験を比べると、レタトルチドの体重減少率が大きく見える場合があります。しかし、試験ごとに対象者や期間、用量、解析方法などが異なるため、その数字だけで優劣を判断することはできません。
レタトルチドとチルゼパチドを同じ条件で比較する臨床試験も進められていますが、2026年9月時点では結果が公表されていない状況です。[4] したがって、「レタトルチドはマンジャロより痩せる」とはまだ断定できません。

レタトルチドの最新研究で報告された体重変化
レタトルチドについては、肥満や過体重、2型糖尿病などを対象とした臨床試験が行われています。
ここで紹介する数字は、決められた条件で実施された試験における平均値です。レタトルチドを使えば、誰もが同じように体重を減らせるという意味ではありません。
第2相試験では48週間で最大平均24.2%減
2023年に医学誌『The New England Journal of Medicine』で発表された第2相試験では、糖尿病のない肥満または過体重の成人338人が対象となりました。48週間後の平均体重変化率は、12mg群でマイナス24.2%、プラセボ群でマイナス2.1%でした。[3]
この結果を受け、より多くの参加者を対象とした第3相試験へ研究が進められています。
TRIUMPH-1試験では80週間で最大平均28.3%減
2026年に公表された第3相試験「TRIUMPH-1」では、糖尿病のない肥満または過体重の成人2,339人が参加しました。
80週間後の平均体重変化率は次のとおりです。[2]

12mg群では、45.3%の参加者が30%以上の体重減少を達成したと報告されています。[2]
ただし、この試験の参加者は平均体重やBMIが比較的高く、日本人に同じ結果が当てはまるとは限りません。また、数字は最高用量を含む各群の平均値であり、体重の変化には個人差があります。
なお、2026年9月時点では、一部の結果は開発企業による発表段階です。今後、査読を受けた論文や規制当局の審査によって、より詳しい情報が示されることになります。
104週間の延長試験で報告された結果
TRIUMPH-1のうち、試験開始時のBMIが35以上だった参加者を対象とした延長試験では、12mg群の平均体重変化率が104週間でマイナス30.3%でした。[2]
80週以降も体重変化が続いたことは注目されていますが、すべての参加者を対象とした数字ではありません。対象者が限定された延長試験の結果として理解する必要があります。
試験結果を見るときの注意点
「平均28.3%減」という数字だけを見ると、非常に大きな変化に感じられるでしょう。しかし、次の点もあわせて確認することが大切です。
- 80週間使用した結果である
- 最高用量の12mg群における平均値である
- 試験参加者全員が28.3%減ったわけではない
- 食事や運動などの生活習慣への働きかけも行われている
- 日本人だけを対象とした試験ではない
- 長期的な安全性は引き続き評価されている
研究結果は、個人の変化を保証する数字ではありません。お薬の評価には、体重変化だけでなく、副作用や継続のしやすさも含まれます。
体重以外に研究されていること
レタトルチドは、体重だけでなく、血糖や肥満に伴う健康上の問題についても研究されています。
2型糖尿病と血糖値
2型糖尿病のある成人を対象とした第3相試験では、40週間でHbA1cが最大平均2.0ポイント低下し、体重は最大平均16.8%減少したと報告されました。[5]
また、2型糖尿病と肥満または過体重のある成人を対象とした別の第3相試験では、80週間で最大平均20.8%の体重減少が示されています。[6]
糖尿病の有無によって体重の変化が異なる可能性があるため、試験結果を比較するときは対象者を確認しましょう。
脂肪肝・MASH
レタトルチドは、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)や、炎症・線維化を伴うMASHへの影響も研究されています。
第2相試験では肝脂肪量の減少が報告されていますが、将来どの疾患に対して承認されるかは決まっていません。[7]
睡眠時無呼吸症候群や膝の痛み
肥満と関係する閉塞性睡眠時無呼吸症候群や、膝の変形性関節症に伴う痛みについても臨床試験が行われています。
開発企業は、睡眠時無呼吸の重症度や膝の痛みに改善がみられたと発表しました。ただし、体重減少による影響も含まれるため、レタトルチドが痛みや睡眠時無呼吸へ直接作用したと単純に判断することはできません。[5]
レタトルチドで報告されている副作用
レタトルチドの臨床試験では、次のような症状が報告されています。[2][3]
- 吐き気
- 下痢
- 嘔吐
- 便秘
- 食欲の低下
- 胃腸の不快感
消化器症状は、用量を増やす時期や用量が高い場合に多くみられる傾向があります。
第2相試験では、心拍数の上昇も確認されました。[3] 第3相試験を含むデータの蓄積は進んでいますが、より長期間使用した場合の安全性については引き続き検証が必要です。
また、臨床試験で報告された副作用だけで、承認後の注意事項が決まるわけではありません。正式な対象者や用量、使用上の注意は、規制当局による審査を経て定められます。
レタトルチドは日本でいつ承認・発売される?
2026年9月時点で、レタトルチドは日本を含む世界のいずれの国・地域でも承認されていません。[1]
開発企業は、米国食品医薬品局(FDA)に対し、2027年第1四半期に承認申請を行う予定だと発表しています。[6] ただし、申請は承認や発売を意味するものではありません。
日本での承認申請や発売時期については、現時点で具体的な予定が公表されていない状況です。海外で承認されたとしても、日本で同時に使用できるようになるとは限りません。
したがって、「2027年から日本で使える」「すぐにマンジャロから切り替えられる」といった情報には注意してください。
通販や個人輸入でレタトルチドを購入してもよい?
レタトルチドは未承認の開発中薬であり、正規の医薬品として一般向けに販売されていません。
インターネットやSNSでは、「研究用」「レタトルチド配合」などとうたう製品が販売されている場合があります。しかし、こうした製品は次のような点を確認できない可能性があります。
- レタトルチドが実際に含まれているか
- 表示どおりの濃度か
- 不純物や別の成分が混入していないか
- 衛生的な環境で製造・保管されているか
- 人への使用を前提に品質が管理されているか
開発元のイーライリリーも、臨床試験外で販売されている未承認のレタトルチド製品について注意を呼びかけています。[8]
「研究用」として販売されている製品を人体に使用したり、個人輸入品を自己判断で注射したりしないでください。
現在利用できるメディカルダイエットの選択肢
レタトルチドは、将来の選択肢として研究が進められている段階です。現時点で使用できるお薬ではないため、レタトルチドを前提とした診察や処方は受けられません。
一方、現在利用できるメディカルダイエットには、食事や運動の見直しに加え、医師が必要と判断した場合に飲み薬や注射薬を使用する方法があります。
必ずしもお薬が必要なわけではありません。目標やBMI、健康状態、持病、服用中のお薬などを踏まえ、自分に合った体重管理の方法を医師と相談することが大切です。
メディカルダイエットの種類や注意点は「メディカルダイエットとは?種類・効果・注意点を解説」でも紹介しています。
※ジュニパーではレタトルチドを取り扱っていません。処方の可否やお薬の選択は、診察を行った医師が判断します。

レタトルチドについてよくある質問
Q. レタトルチドは日本で使えますか?
2026年9月時点では、日本で承認されておらず、医療機関で処方を受けることはできません。海外でも承認された医薬品として一般販売されていないため、通販やSNSで見かけても購入・使用しないようにしてください。
Q. レタトルチドはマンジャロより痩せますか?
現時点では断定できません。
別々の臨床試験ではレタトルチドの体重減少率が大きく見える場合がありますが、対象者や期間などの条件が異なります。両者を同じ条件で比較する試験も進行中ですが、結果はまだ公表されていません。[4]
Q. レタトルチドはGLP-1受容体作動薬ですか?
レタトルチドはGLP-1受容体だけでなく、GIP受容体とグルカゴン受容体にも作用するよう設計されています。そのため、単一のGLP-1受容体作動薬ではなく、「GIP・GLP-1・グルカゴン受容体作動薬」や「三重作動薬」と表現されます。
Q. レタトルチドの価格はいくらですか?
未承認で販売されていないため、正規の価格はまだありません。インターネット上で価格が表示されている製品は、承認を受けて正規に流通しているレタトルチドではない可能性があります。
Q. レタトルチドはいつ発売されますか?
日本での承認申請や発売時期は公表されていません。米国では2027年第1四半期に承認申請が予定されていますが、審査の結果や期間は確定しておらず、日本で同じ時期に使えるという意味でもありません。[6]
Q. 個人輸入や通販で購入できますか?
通販サイトなどでレタトルチドを名乗る製品が販売されている場合でも、購入・使用は避けてください。未承認品は成分や濃度、衛生状態が保証されておらず、健康被害につながるおそれがあります。[8]
まとめ
レタトルチドは、GIP・GLP-1・グルカゴンという3つの受容体に作用する、開発中の週1回注射薬です。
臨床試験では大きな体重減少が報告され、2型糖尿病や脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群などへの影響も調べられています。一方、マンジャロより優れているかどうかはまだ確定しておらず、長期的な安全性についても検証が続いています。
2026年9月時点では、日本を含めて承認された国・地域はありません。個人輸入や通販で販売されている製品を自己判断で使用せず、現在利用できる体重管理の方法については医師へ相談しましょう。
薬剤師監修|ジュニパー薬剤師 芝軒千紘
※本記事の情報は2026年10月7日時点のものです。※本記事は情報提供を目的としており、特定の未承認薬の購入や使用を勧めるものではありません。※レタトルチドは、日本を含む世界のいずれの国・地域でも承認されていません。ジュニパーでも取り扱っていません。※個人輸入や通販などで販売されている未承認品は、品質・有効性・安全性が確認されていない場合があります。※本記事は個別の診断や医療上の助言に代わるものではありません。


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