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肥満症は病気?医療機関の見解と治療法

「肥満症は病気なのか」という長年議論されているテーマ、そして肥満と肥満症、メタボリックシンドロームとの違いについて解説します。

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肥満症とは、単に太っているだけではありません。身体的、心理的、ホルモン的、代謝的、遺伝的、環境的など、かなり多面的な要因を持つ病態のことを指します。食生活、運動習慣、喫煙、飲酒などの生活習慣が主な原因で発症する慢性疾患の総称である、生活習慣病の一つでもあります。さらに、これらの病態が重なって発症するメタボリックシンドロームとも大きく関係しています。

しかし、肝炎や糖尿病、がんなどのように、厳密に“病気”なのでしょうか?実際には、病気の人も、そうでない人もいるでしょう。「肥満症は病気なのか」という議論は何年も続いており、いまだに決定的な結論は出ていません。

とはいえ、大多数の医療機関や専門家が同意しているのは、肥満症は他の深刻な問題を引き起こす可能性のある「公衆衛生上の大きな問題である」ということです。

そこで、肥満症について知っておいて欲しい6つの項目をご紹介します。

1. 肥満症とは?

世界保健機関(WHO)によると、肥満症とは「健康にリスクをもたらす過剰な脂肪蓄積」です [1]。

太りすぎや肥満症の原因となるものはいくつかあります。例えば、食生活の乱れや運動不足、遺伝、ホルモンの状態、薬の服用などです [2]。

しかし、肥満症の複雑さは、その患者が強い心理的要素を持っているという事実にあります。患者の多くは、気分の問題、低い自尊心、否定的な身体イメージ、生活の質の低下に苦しんでいるのです [3] 。

2. 肥満と肥満症の違いは?

肥満症は通常、体格指数(BMI)で定義されます。BMIは、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割って算出します。日本肥満学会では、以下のように定義しています [4]。

  • 肥満:BMIが25以上の人
  • 肥満症:BMIが25以上で、肥満による健康障害(合併症)が1つ以上ある、または腹囲が女性90cm以上・男性85cm以上の内臓脂肪型肥満である人
  • メタボリックシンドローム:BMIが25未満でも、腹囲が上記基準を満たし、血圧・血糖・血清脂質のうち2つ以上が基準値から外れる人

BMIだけでは肥満や肥満症、メタボリックシンドロームを正確に把握できませんが、自分のBMIを測定することは、最初の一歩として最適です。

3. 肥満症による影響は?

肥満症は、代謝機能やホルモンの健康に影響をおよぼし、生活の質と寿命に変化をもたらします。そのため、平均寿命を3〜10年縮めると推定されています。

過剰な体脂肪、特にみぞおち周辺の体脂肪は、心臓病、高血圧、脳卒中、糖尿病、がん、肝臓病、腎臓病、呼吸器疾患、不妊、妊娠障害(妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病など)、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症、うつ病などのリスクを高めます。

4. つまり、肥満症は病気?

日本肥満学会は、肥満は病気ではないが肥満症は病気である、と定義しています [4]。(2. 肥満と肥満症は同じ?を参照)」。

海外に目を向けて見ると、米国疾病予防管理センター(CDC)、米国医師会、欧州医師会、世界肥満連盟、WHOも、「肥満症は病気である」とみなしています [5][6][7][8][9] 。

その理由は、肥満症が単なる食べ過ぎや間違った食事、座りっぱなしの生活習慣による体重増加だとは考えられていないからです。

それらの機関は、肥満症を、肥満症になりやすい遺伝的素因や代謝の問題、あるいは肥満症につながりうるその他の健康障害をともなうことが多い、もっと複雑な問題としてとらえています。

また、多くの専門家は、肥満症は他の疾患と同様、医療機関による正式な治療計画が必要だと語っています。肥満症を病気として分類することで、助けが必要な人々に対する差別や偏見が軽減され、結果的に医療を受けやすくなるというのがその理由です [7] 。

しかし、すべての医療専門家や医療機関がこの分類に同意しているわけではありません。その理由は、BMIは完全に正確な測定値ではないため、肥満症の判断は難しく、その原因は非常に複雑であるため、明確なカテゴリーに分類することはできないというものです。また、より広い意味で「病気」の定義は難しく、さらに、時代とともに変化するものであるとも言います [9]。

これは事実上、すべてではありませんが、ほとんどの人に深刻な健康被害をもたらすこと、そして恒常的で克服が困難であることを表しています。またこの学会は、「病気」という用語の定義がしばしば不適切であるとも語っています [10]。

5. 肥満症は流行病なの?

多くの団体や専門家が、肥満症を流行病と呼んでいます。肥満症の割合は世界中で劇的に増加しており、現在も増加し続けているため、世界的な公衆衛生上の緊急課題となっていると言われています。

肥満症にまつわる現在の数字は、かなり深刻です。アメリカの成人の約42%、オーストラリアの成人の約31%が肥満症であると推定されています [10][11]。2016年の世界では、肥満症の成人は6億5,000万人で、世界の肥満率は1975年以降3倍に増加しています [12]。

また、意外なことかもしれませんが、肥満症は先進国だけに影響をおよぼすものではありません。WHOによると、アジアとサハラ以南のアフリカを除くすべての地域で、肥満症の人の方が低体重の人より多いと言われています。

6. 肥満症の治療法は?

肥満症の治療にはいくつかの方法がありますが、それらに取り組むには複雑な問題もあります。食事や運動だけに注目するのではなく、心理学的・医学的な影響、そしてそのほかの体脂肪を過剰に蓄積させている要因についても考えなくてはいけません。

かかりつけ医に相談する

まずはかかりつけの医師に相談してみましょう。あなたの状態を診察し、ホルモンの影響や医学的な理由、その他の原因を見つけるための検査を行うでしょう。また、生活習慣の改善、減量薬、さらに重度の肥満症の場合は胃バンドなどの手術の選択肢について、減量の計画についても相談することができます。

ライフスタイルを変える

食事と運動は減量の基本です。というのも、体重を減らすには、多くの場合、エネルギー・イン(何をどれだけ食べるか)とエネルギー・アウト(身体活動を通じてどれだけ使うか)が関係してくるからです。

かかりつけの医師や管理栄養士と一緒に、自分の食生活を見直し、改善が可能かどうかチェックしましょう。食事全体の量を減らしてカロリー不足を誘発したり、高糖分・高塩分・高飽和脂肪の食品を、より栄養価の高いものに変えたりすることができます。野菜、果物、全粒穀物、赤身の肉、不飽和脂肪酸などを摂るようにすると良いでしょう。また、即効性を期待するような急激なダイエットは避けましょう。急激に体重を減らすと、長期的には太りやすくなるからです。その代わりに、持続可能なライフスタイルの変化を目指しましょう。

まだ運動をしていない人は、ゆっくりと始めましょう。心拍数が上がり、少し汗をかく程度の中強度の運動を、毎週150分程度行うことを目標にしましょう [13][14]。中強度の運動としては、パワーウォーキング、サイクリング、水中エアロビクスなどがあります。

感情的な要因に向き合う

肥満症には心理的・感情的な要因が絡んでいることが多いので、それらと向き合ってみるのも良いでしょう。心理学者やその他のメンタルヘルスの専門家は、こうした要因を見つけ、肥満症の原因となる行動や思考パターンに対処する手助けをしてくれます。新しい習慣や、うつ病のような肥満症の感情的副作用に対処する方法を身につけることもできます。また、グループセラピーも有益です。特に、同じ経験をした地域の人たちとつながることができれば、さらに効果的です。

減量プログラムに参加する

肥満症の場合、体重のわずか3%を減らすだけで、他の健康合併症の発症リスクを劇的に下げることができると推定されています [2]。そして、包括的な減量プログラムは、あなたの減量計画を始める手助けをしてくれます。

ジュニパーの減量プログラムは、薬物療法、生活習慣の改善、精神的なサポートを組み合わせた多方面からのアプローチにより、安全かつ持続的な減量を成功へと導きます。

わたしたちのプログラムには、代謝をターゲットにし、空腹の欲求を抑制する臨床的に証明された治療法だけでなく、食事や運動から睡眠やストレスにいたるまで、あらゆることに目を向けるヘルスコーチングが含まれています。また、同じ減量目標を持つ仲間が集うプライベート・コミュニティにもご招待し(ただいま準備中)、あなたの成功を常に把握するための、体重のトラッキングもご利用いただけます。

この減量プログラムは、平均的な患者が長期的に体重減少をする際に、最も効果的な方法の一つだと考えられています。

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